10年前の阪神大震災で両親を失った裕人(苧坂淳)は祖母
(絵沢萌子)とともに叔父の家で暮らすことになる。
静かな暮らしが戻り震災についての記憶も薄れ始めたある日
認知症が重くなった祖母の口から「お前の妹のサキ」という
言葉が発せられる。
自分にはサキという妹がいたのか?
再び裕人は震災の記憶と向き合うこととなる。
そんな裕人の前に沙樹(藤本七海)という少女が現れて・・・。
どう受け止めたらよいのだろう。
「妹のサキ」は本当に存在したのか?
裕人は沙樹とともにどこへ行きどうしたかったのか?
何1つ確かなものはない。
「阪神大震災」という事実以外は。
一番わかりやすかったのは路頭に迷う裕人と沙樹に手を差し伸べる
安田(渡辺大介)という男。
震災直後にボランティアとして神戸へやってきたという彼は
大学もやめ、神戸に根を下ろしNPOを立ち上げた。
当時は街の復興、被災者の手助けと忙しく立ち働いていたが
10年たった今ではほとんど活動もなくカラオケボックスで働いている。
そんな彼の前に裕人と沙樹が現れる。
困った人を助けたい、手を差し伸べることで自分の存在価値を確かめたい、
そんな思いがあふれ出ている。
それが裕人にとっては少しばかり煩わしい。
裕人が沙樹にポツリと語る言葉がある。
「『両親がいないから可哀想』と言われ続けてそうじゃなきゃいけないのが
面倒くさいししんどい」
そんな裕人は(そして私も)どこか嬉々として自分たちに手を差し伸べる安田に
薄く不信感のようなもの、あるいは滑稽さを抱くのだ。
裕人の心のひだに潜む苛立ちはかすかに感じ取ることができるものの
裕人という人物にはどうしても共感できない。
いまどきの若者はこんな感じなのかもしれないが喜怒哀楽が平坦で
自分の恋人とも真正面から向き合っているようには思えない。
しかし、だからこそ沙樹の手を引っ張って逃避行に踏み出す姿が
鮮烈に映ったのかもしれない。
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