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英語タイトル「A Simple Life」は少々味気ない。 それに比べると邦題「桃(タオ)さんのしあわせ」は悪くない。 しかしやはり原題「桃姐」が一番しっくりくるような気がする。 買い物をするときに桃さん(葉徳嫻:デニー・イップ)が使う「これ幾ら?」は 「幾多銭?」ではなく「點買?」。 市場で買い物をする習慣がある人なのだな、とこの言葉1つで想像がつく。 60年という年月を1つの家族4代に渡り世話をし続けてきた桃さん。 家族にとっては空気のようになくてはならない存在ながら一定の距離を保ちつつ 生活する彼女の生きる姿勢はその背筋のように真っ直ぐで凛として潔い。 「感動で涙が止まらない」なんていう作品を期待して鑑賞するとあてがはずれる。 許鞍華(アン・ホイ)監督らしく淡々と、静かに桃さんの人生の終焉を描いている。 しかしその淡々と描かれたストーリーの中にこそ見えてくる真実があるはずだ。 桃さんと雇い主であるロジャー(劉徳華:アンディ・ラウ)の距離感がいい。 桃さんは主人と使用人という一線をあくまでも崩すことなくロジャーと接し、 ロジャーは彼女の尊厳を尊重しつつも温かい目で桃さんを見守り手を差し伸べる。 その差し伸べ方が押し付けがましくなく、決して自分も無理をせず絶妙。 2人が並んで歩き自然と手をつなぐその後姿が忘れられない。 この作品は本作のプロデューサー、ロジャー・リー氏の実話を基に作られている。 劉徳華演じるロジャーは興味深いキャラクターだ。 50歳にして女の影はどこにもチラつかず独身。 几帳面な性格に作業着のようなジャンパーを着てディバッグをキチンと背負い 足元はニューバランスのスニーカーと映画業界の人間らしからぬいでたち。 仕事で訪れたオフィスでは受付の女性から空調設備の作業員と間違われ、 茶餐庁で桃さんと食事をしていればお店の店員からタクシー運転手と間違われる。(笑) これらは実際のご本人のエピソードなのだろうか。 ・・・なんていうことが気になってしまう私。 とにかく一瞬登場するゲスト出演陣が驚くほど豪華絢爛。 そんな仕掛けがあるとは全く知らなかったので冒頭シーンでの徐克(ツイ・ハーク)と 洪金寶(サモ・ハン)の登場にビックリして席から飛び上がりそうになった。(笑) ロジャーの友人バッタ役の黄秋生(アンソニー・ウォン)を筆頭に 杜汶澤(チャップマン・トー)、羅蘭(ロー・ラン)、樓南光(ビリー・ラウ)、 モジャさんこと岑建勲(ジョン・シャム)、etc,etc・・・。 エンドロールで林家棟(ラム・カートン)の名前も発見したのだが一体どこに?? 普段香港映画を鑑賞しない方が観ても十分満足できる作品だと思うが、 このサプライズに思わずニヤリとしてしまうのは香港映画ファンだけに用意された この作品の更なるお楽しみである。 桃(タオ)さんのしあわせ オフィシャルサイト 香港・中国合作
by sabunori
| 2012-11-04 23:34
| MOVIE
|
Trackback(1)
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Comments(10)
Tracked
from 風情♪の不安多事な冒険 ..
at 2012-11-05 22:31
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grandma-alice at 2012-11-05 13:18
sabunoriさん、ご覧になったんですね~
同じ漢字の国なので邦題は振り仮名振っただけで十分じゃないかと思うんですけど。 ブルーレイを買ったので月イチで田舎へ帰った時に見続けていますが この映画は良かったです。 老いは誰にでもやってくるもの。 居て当たり前、でも気にならない空気のような存在だった桃さんとロジャーの最後の心の交流に胸打たれました。 それと猫・・・インパクトある顔していました(笑)。
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風情♪
at 2012-11-05 22:30
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こんにちは♪
本作は絶妙の距離感、押しつけの無さ、そして 自然な流れと、観る側にピタっとハマるペース 配分の作品でしたね。 何か、内容以上にこのペース配分の素晴らしさ に目が行きがちになってます…r(^^;) また、本作は中国語圏における高齢化と老人介 護を謳ってもいるんでしょうけど、さほど深刻 に描いていないイイですよね♪ (゚▽゚)v
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sabunori at 2012-11-05 23:47
grandma-aliceさん、こんばんは♪
はい、やっと鑑賞いたしました〜。 邦題、悪くないのですが考えてみると「桃さん」は「トウさん」なのですよね。 「タオさん」は北京語かしら。 香港が舞台で劇中でも「桃姐(トウジェ)」と呼ばれているのに なにゆえ「タオさん」になってしまったのかちょっと理解に苦しみます。 「老い」はおっしゃるとおり誰にでも訪れるものだし、 自分が年をとってきてますます身近に感じられる今日この頃です。 この作品を観ながら心身ともに身辺をこざっぱりさせねば!と改めて 考えました。 ネコのカカ、顔大きくて可愛かったですねぇ。
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sabunori at 2012-11-05 23:55
風情♪さんもご覧になられたのですね♪
淡々と流れていく桃さんの人生の終焉を見ながら 桃さんの潔い生き様に心打たれました。 必要以上に深刻に描かず、また必要以上に綺麗にも描かない アン・ホイ監督のさじ加減の絶妙さは素晴らしいですね。 風情♪さんはペース配分の良さに目がいってしまいましたか。 私はゲスト出演陣の顔ぶれに目がいってしまいましたー。
sabunoriさん、こんにちは~。
この映画すっごく好きです、よかったです。。今年のベストに入れてしまうかも?です。 呼び方なんですが、奥様はタオさんのこと「阿桃」って呼んでたような気がして(違ったらごめんなさい!!)、そのときは「タオ」の発音に近かった気がします。 ロジャーのキャラは興味深かったですね、ニューバランスが目に入ったときは「ニューバランスのスニーカーを履いていいのはスティーブ・ジョブズだけ」っていうライアン・ゴズリングのセリフを思わず思い出してしまいました(笑)。 アンディってほんと若く見えるけど、洗濯機の取説を読もうとしてメガネをかける彼に、ちょっと「老い」を感じてしまいました。 年末年始のシネマートには通えそうもない私ですが、魔術師の映画だけはなんとかして観たい、、と思ってます♪
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sabunori at 2012-11-06 23:15
真紅さん、こんばんは☆
地味ですが良作でしたよね。 桃さんと同い年の(!)ロジャーの母親はおっしゃる通り彼女を「阿桃」と 呼んでいたかもしれません。 多分広東語の「阿桃(アトウ)」の発音は「アタオ」との中間ぐらいで 「アタオ」と聞こえるのかもしれませんね。 ロジャーのニューバランスのスニーカーを見て・・・ 実は私も真紅さんと同じコトを思い出していました。(笑) メガネの描写、撮り説の他に桃さんの老人ホーム探しで 資料を見る時にもありましたよね。妙に細かい演出だわーと思ってしまいました。 暮れから新年にかけてシネマートさんには足を向けて眠れない状態なのですが 真紅さんも例の作品はご覧になる予定なんですね! 考えてみたらトニーさんの作品も久しぶりですよね~。 シネマートに行くついでにTIGERで買い物ができる日は一体いつでしょう。
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呉二
at 2012-11-10 12:27
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こんにちは。
真紅さんも指摘していらっしゃるメガネ、私も気になりました(笑) 彼自身も老いを意識する年齢って事を表しているのでしょうか。 それにしてもロジャーは桃さんのおかげで、とっても贅沢な食生活を していたんだなあと、それは単純に羨ましかったです。 ゲスト出演の方々にはニヤニヤしてしまいますよね。 林家棟の件は噂で聞いていたのにすっかり忘れていて、私も彼がどこにいたのか チェックできず悔しかったです~
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sabunori at 2012-11-11 21:29
呉二さん、こんばんは☆
>彼自身も老いを意識する年齢を表現・・・ おっしゃるとおりな気がします。 ロジャーという人物、映画業界人らしからぬ外観といい、ものすごく 細かく描写されていましたよね。 魚は蒸し魚しか食べないから、と桃さんがロジャーのことを話していましたよね。 そのセリフを聞いてからずっと蒸し魚に醤油ダレをジャ〜ッ!して ほぐした魚の身を白いご飯にタレごとかけて食べたくて食べたくて。(笑) 林家棟、知り合いの情報によるとロジャーと一緒に桃さんの手作りの 牛タンを食べていた彼の友人の中の1人だったのでは?とのこと。 未確認情報なので確実にそうだ!とは言い切れませんが・・・。
sabunoriさん、おかえりなさい♪
香港旅行はいかがだったでしょうか。お食事も美味しそう!! さて、ようやくこの作品、観ました。近場に来るまで待っていました。 一つ一つの描写にいろいろな意味が込められているようで、もっと 集中していれば…なんて思ってしまいます。 私はタオさんの周囲に対する心遣いを、自分が思われているように 感じていました。暖かくて心地いいなあ、でも自分にはまねできないなあ、 などと。 写真の「桃姐」、ほんとにお綺麗ですね~。 映画を見ながら、タオさんは若い頃さぞもてただろう、と思っていたら ロジャーが同じことを言っていて、クスリと笑ってしまいました。 いい作品に出会ったと思います。
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sabunori at 2013-01-17 22:57
孔雀の森さん、ただいまです〜。
香港旅行、短い日程ながら満喫してまいりました。 タオさんの周囲に対する心遣い、おっしゃるとおり心地よかったですね。 私にも絶対マネできないわ。 タオさんの若い頃の物語もちょっと覗いてみたい気がしますね。 観終えてものすごい衝撃がある作品ではないのですが、 しみじみステキなお話でしたね。
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