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それでも使い込まれて美しさを放つ碁盤 パチンと置かれ、わずかに揺れて留まる碁石 これらを見て、音を聞いただけでなぜか心が落ち着くから不思議だ。 物語の冒頭。 呉清源本人が彼を演じたチャン・チェン(張震)らと楽しそうに語らうシーン。 すでに90歳を過ぎているはずの呉清源のしっかりしたそして優しげな口調、 どこか神様みたいなそのたたずまいに圧倒される。 囲碁の神様と言われた呉清源は囲碁の世界から身を引いた今でも やはり神様みたいな存在だ。 1914年中国福建省に生まれ、7歳で父親のもと囲碁を始めた呉清源は あっという間にその頭角を現し、たちまち天才少年と呼ばれるようになる。 1928年、日本人棋士、瀬越憲作(柄本明)の誘いで母親(シルビア・チェン:張文嘉)らと ともに来日したのが14歳。 その後彼が引退するまでの半生を描く。 ビックリした。 囲碁の対局の時間の長さに。 何日もかけて勝負するとは知らなかったのだ。(それほど囲碁には疎い私) ありとあらゆる可能性を考えぬいてようやく一手が打たれるとは・・・。 相手が倒れてもまるで気づかず自分の打つ手に没頭する呉清源の姿に圧倒された。 囲碁の対局シーンが物語のほとんどを占めるのではないか? そう思っていたのだが、囲碁のシーンは思いのほか少なく、日本人女性との結婚、 太平洋戦争開戦、日本人への帰化(物語を見る限りでは最後の最後で帰化をやめた、 と思ったのだが実際には帰化されたようだ)、結核のための療養生活、宗教への傾倒と 人間呉清源としての半生を淡々と描いている。 やはりチャン・チェンがいい。 「囲碁」と「真理」自分の人生にはこの2つしかない。 そう言い切った呉清源。 対局の最中に碁盤を見てからふと宙を見て思いにふけるその知的な横顔は 呉清源そのものに見えた。 そして積極的には語られないものの、呉の恩師瀬越と親友木谷の存在もまた大きい。 この2人の生涯についても興味深く、特に瀬越の最期には胸を衝かれた。 初日に鑑賞したのだが、指定された劇場に足を踏み入れようとしてふと 自分の半券を見直した。 劇場にいる人達がほとんど中高年の男性ばかりだったからだ。 私のように中国映画ファンではなく囲碁ファンの方々だろう。 いつもと少しだけ違う空気の劇場で観る映画もいいものだ。 呉清源 極みの棋譜 オフィシャルサイト
by sabunori
| 2007-11-19 18:05
| MOVIE
|
Trackback(10)
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Comments(18)
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from 日っ歩~美味しいもの、映..
at 2007-11-19 21:01
タイトル : 呉清源 極みの棋譜
1914年に中国、福建省で生まれた呉清源は、7歳で囲碁を学び始め、たちまち"天才少年"と呼ばれるようになります。そして、彼の存在に目を留めた棋士、瀬越憲作の尽力により、当時、囲碁の実力で中国を凌駕していた日本に招かれ、母と来日します。その実力で、日本囲碁界... more
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from 江戸っ子風情♪の蹴球二日..
at 2007-11-20 11:05
タイトル : 呉清源 極みの棋譜
中国 ドラマ&伝記 監督:ティエン・チュアンチュアン 出演:チャン・チェン 柄本明 シルヴィア・チャン 伊藤歩 【物語】 昭和3年、北京で囲碁の天才少年と騒がれた呉清源は、棋士・瀬越憲作の 尽力で14歳で母と兄と共に来日...... more
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from 夢の国・亞洲文化宮
at 2007-11-20 19:27
タイトル : 呉清源 極みの棋
2006年/中国/1時間47分(劇場にて鑑賞) 監 督 田壮壮(ティエン・チュアンチュアン) 英 題 The Go Master 出 演 張 震(チャン・チェン) 柄本 明 張艾嘉(シルビア・チャン) ... more
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from ダディャーナザン!ナズェ..
at 2007-11-20 20:12
タイトル : 【2007-166】呉清源 極みの棋譜
人気ブログランキングの順位は? 中国から来た史上最強の棋士 その数奇なる昭和時代を描く<真実>の物語 美しき天才の、静かなる孤独。 20世紀に一人・・・ 華麗なる運命が、いま訪れる── ... more
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from パフィンの生態
at 2007-11-21 21:32
タイトル : 呉清源 極みの棋譜
2006年中国映画、田壮壮監督。14歳で中国から日本に留学した 天才が囲碁に向きあう真摯な姿を描いた秀作。呉になりきって 精神世界を体現したチャン・チェンの演技が素晴らしい! 日中戦争による母(シルビア・チャン)との別れ、肺病を患い、 日本人と結婚し、宗教団体に属しながらも常に囲碁を忘れなかった 呉清源。戦前、戦後にかけて実施された「打ち込み十番碁」で勝ち 続けた彼の生涯を淡々と描いた静謐な作品に心洗われる。 昭和の面影を残したロケ地、和服の立ち居振る舞い、日本家屋の様式美など 丁寧に作った制作ス...... more
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from 真紅のthinkingd..
at 2007-12-01 11:32
タイトル : 聖なる空間〜『呉清源 極みの棋譜』
THE GO MASTER 中国・北京に生まれ、その天賦の才を買われ14歳で囲碁修行のために来日した 呉清源(ご せいげん)。川端康成を始めとする文豪に愛され、昭和囲碁界最強の 打ち手と呼ばれ、囲碁界に革新をもたらした天才棋士である。激動の昭和を生き、 9...... more
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from 犬儒学派的牧歌
at 2007-12-10 20:13
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from シネクリシェ
at 2007-12-16 11:45
タイトル : 呉清源 極みの棋譜
かなり以前からこの映画の話は耳にしていましたが、なかなか公開されず立ち消えになったと思いきや、やっと陽の目を見ることとなりました。 囲碁を若干なりともたしなむ自分としては、待ちわびていただけに喜び... more
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from It's a Wonde..
at 2008-03-06 20:23
タイトル : 呉清源 極みの棋譜
台湾の俳優、張震、チャン・チェンをスクリーンで始めて観たのは 十三の七藝で観たエドワード・ヤン監督の「カップルズ」だった と思う。映画の中でもひときわ印象の残った彼の前作 「クーリンチェ少年殺人事件」はそういえばまだ観れてません。 もっと印象的だっ...... more
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from Have a movie..
at 2008-09-13 02:46
タイトル : 呉清源 極みの棋譜
まず書いて置きたかったのは、映像の素晴らしさ。そして呉清源という人の精神性の高さと孤独と繊細さを観た清々しさ。 &...... more
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mmiizzz at 2007-11-20 09:27
これ、予告編で「かつーん」っていう碁を打つ音が気持ちよくて
気になりました。 以前、碁をやってみようかなあ…と思ったことがあるんですが そもそも勝敗の見極めすら難しくて挫折しました…。 私もときどき「オヤジ映画」を見てしまうことがあるんですが。。。 おじさんに囲まれるのはいいんだけど。。。 なんかポマードくさい。。。
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こんにちは♪
木谷が対局中に鼻血を出して倒れても碁盤から 目を放さず集中してる氏の集中力の凄まじさが とても印象的でした。 オヤジ率が高めなのは題材が題材なだけにしょうがな いでしょうね。先日観た「カンフー無敵」は主演のヴァネ ス・ウー目的で平均年齢がちょい高めの女性ばかりで 功夫映画にも関わらず香水の香りが充満してて、ちょい 困りもんでした♪ (゚▽゚)v
こんばんは。またまたお邪魔します♪
劇場で息をつめて見入っていました。チャン・チェンは素晴らしかったですね! 冒頭の楽しげに歓談するシーンには引き込まれました。ご本人とご夫人、そして役者がとてもなじんでいて、いい風景だなあと思いました。 この作品は何度でも劇場で観たいです。
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sabunori at 2007-11-20 22:36
mmiizzzさん、淡々と進むストーリーなんですが、いい作品でしたよ!
碁についてはまるでわかっていない私ですが、そ、そうなんですか。 勝敗の見極めすら難しいんですね・・・。 あの小さな碁盤の中に計り知れない可能性が広がっているんだなぁ・・・と この作品を観ながら考えてしまいました。 「オヤジ映画」ですか。(笑) 明日にでも書こうと思いますがもう1本オヤジ映画観てきましたよ、私。
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sabunori at 2007-11-20 22:44
風情♪さん、こんばんは。
そうそうあの木谷氏の倒れるシーンの呉清源の集中力はすさまじいものが ありましたね。 >相手の五手十手先を見据えて一手をうたなきゃならんゲームです という風情♪さんのブログの方でのコメントに腰を抜かしました。 ・・・ということはその一手を打つことで勝負の行方(結果)がどうなるかという ところまで先を読んで打つのですね。驚愕です。 ところで「カンフー無敵」もご覧になられたんですね。 こちらは12月に公開です。ちょっと微妙な感じですがどうなんでしょうか?? 楽しみなような怖いような。(笑) 香水の香りも結構辛いですよねー。 先日私も隣に座ったガタイの良い男性が「お前頭から浴びてきただろう!」と いうくらい香水がきつくて死ぬかと思いましたー。
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sabunori at 2007-11-20 22:58
孔雀の森さんこんばんは。
チャン・チェンは呉清源そのものに見えました。 あの手をふらずに足早に歩く特徴ある歩き方が印象的でしたね。 対局の時に必ず持っている扇子や使いこまれてツルツルの碁盤など 小道具までも素晴らしかったです。 孔雀の森さんはもう1回観にいきそうですね!
sabunoriさま、こんばんは♪
>音を聞いただけでなぜか心が落ち着く この音を聞きながら映画の世界に引き込まれてしまいました。 チャン・チェンの演技力と制作スタッフの丁寧な仕事に感心した映画です!ジョン・ウー監督の「レッドクリフ」にも出演するそうですね。
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sabunori at 2007-11-21 22:42
パフィンさん、こんばんは♪
もうね、絶対パフィンさんはご覧になるはず!と思っていました。 ズッシリと重厚感のある丁寧な作りの作品でしたね。 日本家屋から小物に至るまで細部にまでこだわりが感じられました。 チャン・チェンは見事に呉清源を演じていたと思います。 ロイド眼鏡に和服姿の似合うこと! ジョン・ウーの「レッドクリフ」ですか。要チェックですね♪
この映画観られたんですね~。私はまだなんですよ。そろそろ行かないと・・・と思っていると、12月1日から神戸で上映されるのを最近知って、神戸の方で見ようと公開を待ってるところ。
sabunoriさんの感想を見ると益々興味が湧いてきました。 最近は中国映画も神戸とかでも公開してくれる機会が増えて嬉しいです。今回見に行く映画館は意外なことに一度も行った事ないトコロでそこに行くこと自体も楽しみだったりします。
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sabunori at 2007-11-25 22:56
かずさん、12月1日にご覧になれば1,000円じゃないですか!
ちょうど土曜日だしラッキーかも。 ものすごく静かだけれどズッシリとした手ごたえのある作品でした。 やっぱり地元で公開してくれると嬉しいですよね。 これがきっかけでその劇場にあししげく通うことになったりして。 この作品を上映してくれるなら今後も中国映画をやってくれる劇場かも しれませんね♪
sabunoriさま、こんにちは。初日にご覧になったのですね。
(今日は『花蓮の夏』をご覧になっているのかな~?) 囲碁も田壮壮監督も呉清源知らず、ただただチャン・チェンくん目当てで観た私ですが、「凄い!」と思いました。 こんなに静かな映画なのに、全く眠くならなかったんですよ。 チャン・チェンくんって「佇まいの人」ですね。素敵です。大好きです。 TBさせていただきました!ではでは~。
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sabunori at 2007-12-02 00:55
真紅さん、こんばんは♪
この作品ご覧になった方の間ではかなり評判がいいですよね。 もちろん私も素晴らしい作品だと思いました。 張震は本当に引き出しの多いステキな役者ですよね。 もちろん実力派だし。 あの肩をすぼめたどこか浮世離れした歩き方が印象的でした。 ところで・・・ギクリ! 真紅さんに私の行動は読まれているようですね。(笑) はい、本日(あ、もう昨日か)しっかりと「花蓮の夏」を観てまいりました。 絶対オススメです!真紅さんにも是非観ていただいて感想をお聞きしたいわ〜。 あ、今日シネマートにて「花蓮の夏」の入場を待っていたら「呉清源」を 観終えて出てきた方々・・・やっぱり碁ファンの年配の男性が多かったです。
こんばんは、一昨日にひきつづきお邪魔します。
確かに『花蓮の夏』に比べると観客の年齢層が高かったように思います。ああそうか、囲碁のファンが大半だったのかも知れませんね。私は囲碁ファンではないですが、いつも扇子を携帯していたりします。 残念ながら私にとってはあまり満足できる作品ではなかったものの、端正でハンサムなんだけど、線が細くて何となく足が半分宙に浮いているような(変な形容ですみません)チャン・チェンの佇まいに独特の雰囲気が漂っていて面白く感じられました。脇役では柄本明の渋さが光っていたと思います。 それから、チャン・チェンの出演作では、京都みなみ会館で今月下旬に『百年恋歌』がみなみ会館で上映されるので(遅いっ!)見に行こうと思っています。
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sabunori at 2007-12-10 23:26
狗山さんはいつも扇子を携帯ですか!ステキです♪
淡々と呉清源の半生を描いているので観終わってみると「ここ!」という 盛り上がりが見つからない作品であることは否めませんね。 ただあの緊張感の張り詰める対局シーンの気持ちよさは大変気に入りました。 確かに柄本明はかなり光っていましたね。 逆にシルビア・チェンは彼女が演じなくてもよかったのでは・・・?と思いました。 友情出演的なものだったのでしょうか。 みなみ会館で上映される「百年恋歌」、もちろんチェックしてますよ〜。 私はシネマートで以前に鑑賞済みなので今回はパスですが 私は結構好きな作品でした。 狗山さんも結構お好きじゃないかという気がするのですが・・・どうかしら。 すでにDVD発売されていますが、やっぱりできる限り劇場で観たいですよね。
sabunoriさん
こちらにも! チャン・チェンが引っ込んで映画上映!となったときにざざざと 出て行った方が結構いて、映画観んのかよーおい(笑)と思いましたが すごく単調なハズなのに不思議に眠くならないのが不思議でした。 囲碁がお好きだという田監督、チャン・チェンに呉さんの面影を 発見し、彼が碁盤に向かってる絵が脳裏に浮かんだんでしょうねー。 なんかその絵だけ撮れればあとは人生をなぞっていこう!っていう そういう映画に見えました。ドラマチックな人生なのに、あまりドラマ チックな映画になってない不思議な作品だと思います。
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sabunori at 2008-03-06 23:35
kazuponさん、こんばんは★
そうそう、チャン・チェンがいなくなると同時にササ〜ッと消える人いましたね。 あれはやっぱり出待ちっていうヤツですか? 彼女たちは映画はすでに公開時に観ているだろうし、更に生チャン・チェンを 堪能しようと考えたのでしょうね。 思っていたより囲碁のシーンはかなり少ないですよね。 kazuponさんのおっしゃる通り田監督は囲碁の対局そのものではなく 呉清源が碁盤に向かっている絵を撮りたかったのかも。 それにまんまとハマッてしまいました。(笑) 淡々とした物語なのになぜか眠くはならない・・・本当にそうですよね。 中国の監督が撮った作品ながら日本の美しさを堪能できる作品でした。
sabunoriさん、ご無沙汰しておりました。お邪魔します。
劇場でご覧になったんですね。映像がさぞ美しかったでしょうね。 私も瀬越憲作の「碁が打てなくなった」という最期には愕然としました。 そして思い返した冒頭の清源の快活そうな聡明な笑顔にホッとしました。 TBさせて頂きました。
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sabunori at 2008-09-13 23:38
fizz♪さん、こんばんは。
こちらこそご無沙汰しておりました。 はい、劇場で1回、更にチャン・チェンが来日した時にもう1回と計2回 観てしまいました〜。 瀬越先生の最期の言葉には私も胸をつかれました。 彼の人生にスポットを当てた作品も作れそうですよね。 それにしてもチャン・チェンの佇まいが美しい作品でした。
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