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山間部の小さな村。 数年前まで無医村だったこの村唯一の医者伊野(笑福亭鶴瓶)は 村民たちにとっては神様もしくはそれ以上の存在だ。 そこへ東京の医大を出たばかりの研修医相馬(瑛太)がやってくる。 田舎暮らしに戸惑い、さっさと研修を終えて都会へ戻るつもりだったが 伊野と仕事をするうちにいつのまにやら村に溶け込んでいく相馬。 しかしそんなある日突然伊野が消える。 伊野には「ある秘密」があったのだ。 劇場は現在大入り状態らしい。 私が観た時も年配層の方でごった返していた。 多分「おくりびと」と同じ空気を感じとって鑑賞された方が多いのではないかな、と思う。 脇を固めているのも余貴美子、笹野高史とまさに「おくりびとメンバー」だ。 しかしあの作品のような「いい話」を期待していたらきっと当てが外れる。 なんといっても西川美和監督作だから。(←褒め言葉) 予告編を観ただけでも伊野の持つ「ある秘密」の内容は想像がつく。 だからその謎解きが物語の重要な部分ではないのだろうな、とは思っていた。 誰もが持っているであろう人間の二面性。 西川監督は伊野だけでなく村の人々それぞれのもう1つの顔についても描く。 伊野の秘密を知る前と後の人々の変わりようがリアルで興味深かった。 薄々感じていました、と虚勢を張る者 逆に知っていたがお互い持ちつ持たれつだった者 善とか悪とかの問題ではないからこんなものだよな、と思う。 刑事の「伊野は村民に愛を感じて治療にあたっていたのだろうか」という問いに対する 香川照之演じる製薬会社の男の答えが絶妙だ。 彼はいきなり座っている椅子ごと倒れるのだ。 すると助けるために刑事が咄嗟に手を出すのを見て男は言う。 「刑事さんには僕に対して愛情なんてありませんよね。でも咄嗟に思わず手を出した。 彼だってそういうことなんじゃないですか?」 無医村を放っておけなくて自然や村民たちとのふれあいにこそ医療の真髄がある、 なんていう綺麗なお話だったとしたら私は決してこの作品を観ることはなかっただろう。 人間の曖昧さ、こずるさ・・・そこから垣間見える小さな愛おしさ。 そのあたりを描かせたらやはりこの監督はうまい。 しかし個人的にはそれほど心が傾く作品ではなかった。 なぜ伊野はあんなふうに転々と逃げ回る生活を続けるのか。 彼は一体何を、どんな生活を望んでいるのだろうか。 そんな彼の心の中を私にはうまく読み取ることができなかったのだ。 そして伊野役の笑福亭鶴瓶・・・この人の起用は果たしてよかったのだろうか。 あの人懐こい笑顔の裏側を演じさせたくてこの人を選んだのかもしれないが 私にとっては彼は何をやっても鶴瓶以外の何者でもなく、 彼ばかりが浮いた存在に映ってしまうのだ。 ディア・ドクター オフィシャルサイト
by sabunori
| 2009-07-09 08:10
| MOVIE
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Trackback(3)
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Comments(12)
Tracked
from 真紅のthinkingd..
at 2009-07-09 10:23
タイトル : 秘密と嘘と罪〜『ディア・ドクター』
Dear Doctor 水田が連なる僻村の診療所に、研修医の相馬(瑛太)がやってきた。彼を迎え たのは、善良そうな医師の伊野(笑福亭鶴瓶)。村の人々が「神さんより、仏さん より大事」と崇める...... more
Tracked
from 獏のいる庭園
at 2009-07-10 01:57
タイトル : 映画部 感想文
今年の春、何を思ったか 幼なじみの友人が「映画部」を作ろう!と言い出した。 なんて事は無い、用は時々レイトショーの映画を観ようって事で 一応、このメンバーで一番多く映画を観てそうな私は顧問として就任。(が、メンバー3人) 恋人同士で観ても盛り上がらないような映画をモットーに地味に活動中。 ちなみに今までは『少年メリケンサック』『スラムドッグ・ミリオネア』 『鴨川ホルモー』など・・・(一番人気は「鴨川ホルモー」) 本日鑑賞は『ディア・ドクター』 何と言っても西川美和監督『ゆれる』で、...... more
Tracked
from dada-log
at 2009-07-16 23:44
タイトル : ディアドクター
面白かった。 興味深かったです。 劇場は満員御礼。 客層は少し年輩め。ちょうどうちの両親のようにNHKの「家族に乾杯」を観ているような 鶴瓶ファンの年齢層なのではないでしょか。 早起きしてすいている朝の回を観るつもりが 劇場到着ちょい遅れ。 急いでスベりこんだものの、急に暗闇に入って目が慣れない。 自分の座席まで文字通り手探り。 思わず端っこの席の方のこめかみをこづいてしまいました。 ひゃ~っはずかし~ごめんなさい~っ (目が慣れてくると結構視界は明るく、手探りで進むほど...... more
sabunoriさん、こんにちは~。
う~ん、全く同感!! 世間では「鶴瓶が鶴瓶に見えない」と大絶賛されてますが、私も鶴瓶にしか見えませんでした(笑)。 演技は巧い人ですもんね、落語家だし。 他の映画を観に同じ劇場へ行った時、この映画が完売になっていて驚きました。 鶴瓶人気かな、と思ってしまった。。 あと、香川さんは毎度嫌味なくらい巧いですね。
0
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ichiko1515jp at 2009-07-09 21:08
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yokusang_09 at 2009-07-09 22:41
ご覧になられたんですね~。
予告編観て、結構気になってはいたんですけど、でも、その一方で、 鶴瓶が田舎で人々とふれあう様子=「家族に乾杯」 って構図も頭を過ぎっちゃったんですけどねwww sabunoriさんのブログを参考に、過度な期待をせず、 でもタイミングがあえば観ちゃおかなー、って思ってます。
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sabunori at 2009-07-09 23:47
真紅さん、こんばんは。
えぇっ!世間では「鶴瓶が鶴瓶に見えない」と大絶賛? そりゃービックリです。 どこを切っても金太郎風に鶴瓶以外の何者でもなかったですよね。 あぁ、「おくりびと」と同様のにおいを感じたから大入りなのかと思いましたが 確かに鶴瓶人気もあるのでしょうね。 香川さんはもうそこに立っているだけで巧いですよね。 特にこういう裏の顔がチラリとのぞく役をやらせたらゾクゾクするくらい 巧いです・・・。
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sabunori at 2009-07-09 23:52
ichikoちゃん、多分混んでいるから要注意ですよ!
世間の評判はいいのですねーそうか~。 王道的に「いい話」という感じではなくて、「ゆれる」同様人間の二面性とか 善悪の境目とかそういうところを描いた作品でした。 私は鶴瓶がちょっと・・・だったので点数が辛くなってしまいましたが 是非感想を聞かせてくださいね。 そういえば私が観たときは年齢層が高くて瑛太狙いの人があまり いなかったような気が・・・。 彼のめちゃくちゃラフなスタイル+白衣姿、よかったですよ~。
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sabunori at 2009-07-09 23:58
yokusangさん、最近映画ご覧になってますよね〜。
なかなか交差点がなくてコメント入れられなくて残念。 是非これもご覧になって感想をUPしてくださいませ。遊びにいきますよん。 私の感想は毎度のことながらあてにならないと思いますので yokusangさんの感想をお聞きしたいです。 どこも大入りということはやっぱりそれに価する作品なのかもしれません。
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kohakuza at 2009-07-10 02:12
sabunoriさ〜ん、こんばんは♪
その後お身体の調子は如何ですか? 私も本日、観てきました。 私も鶴瓶は鶴瓶にしか見えない派ですが 中々面白く鑑賞しました。 「ゆれる」程の心の揺さぶりは無かった物の この監督は、誰でも持ってて、誰にも見せたくない部分を 描くのが旨いですね〜。 香川さんや八千草薫さんのコチラも緊張する演技も 良かったです。
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sabunori at 2009-07-10 22:25
こはくさん、こんばんは★
映画部部活、とっても楽しそうですねぇ。 部員のお1人リアル・ドクターの感想、なるほど〜と思いつつ拝見しました。 伊野の「球がひっきりなしに飛んでくるから仕方なしに打ち返していたら その気になってしまっていた」というセリフ、あぁ、わかる!と思わず 膝を叩いてしまいました。 香川さん、八千草さん、余さん・・・文句なくうまいですよねぇ。
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なおみ
at 2009-07-12 22:31
x
西川みわみわだから・・きっと一筋縄ではいくまい!と思っていましたが
どこをとっても「つるべ~」なのはキャラが濃すぎだと思います。 ストーリー展開も若干弱い。 ちなみに私のリンクする人気映画ブログでは・・・・ この映画を「邦画今期NO1」にあげていました。
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sabunori at 2009-07-12 23:01
なおみしゃん、そうです。
西川美和監督だからもちろんそんなにフツーのいい話なはずもなく。 相変わらず人の心の裏側をえぐるような描写はうまいなぁと思いました。 「どこをとっても鶴瓶」は私がそう感じたものの、↑のコメントで真紅さんが おっしゃっているように巷では「鶴瓶が鶴瓶に見えない」と絶賛されて いるようなので人それぞれ感じ方が違うと思いますよ。 「邦画今期No.1」ですか〜。 私は何だろう・・・。それほど印象的な作品を観ていないような気がします。 私が観た中では「大阪ハムレット」「ノン子36才(家事手伝い)」あたりかな。
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ichiko1515jp at 2009-07-16 23:43
TB&コメ、ありがとうございました~
伊野の失踪後の瑛太くんのコメントの変わりようが いかにもイマドキの若者、といった感じでうなりました。 それでも、熱く医療を語ったのは本心であったと信じたいのですが どうですかねぇ。あれも単なる一面だったのかなぁ。 最後に微笑んだかづ子さん。 彼のやったことはけして許されることではないけれど なんとなく憎みきれないのは、私だけでしょうか。。。 伊野が公衆電話から父親に電話をかけるシーンも印象的でした。 そういえば今思い出したけど うちの近くにも昔無免許で歯医者やってて捕まった歯科医院がありました!! 現実にもありえなくないとなると、恐ろしい話です・・・ 憎みきれないじゃすまないかー
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sabunori at 2009-07-17 20:35
ichikoちゃん、こちらこそどうもありがとー。
あの相馬の変わりようには本当にビックリしてしまいました・・・。 でも多分知らずに1人熱くなっていた自分を他人に知られたくなかった、 というのもあるんでしょうね。 あの「ここに戻ってきます」という言葉に偽りはなかったんだと思いますよー。 法律的には伊野の行った行為は悪ですが、あれだけ村の人たちを 助けて(それはおもに内面的にですけど)きたことを考えれば 医療の一番大切な部分ってそういう心のケアの方なのかも・・・と 思いますよね。 本当に重大な病気を治すのはムリでもちょっとしたことだったら 「病は気から」みたいなものってあるんだな・・・と。 ご近所の歯医者さん・・・患者さんたちそれぞれみんな治療してもらって 特に問題なかったわけですよね・・・捕まるまでは。 医師免許は持っていなくても勉強はした方だったのかしら。
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