著者である牧野薊(あざみ)氏のお名前を初めて目にしたのは
香港在住時に読んでいた邦人向け新聞「香港ポスト」のエッセイでと記憶する。
外国人と結婚した香港在住日本人女性の会「香港桜会」の会長をされていた牧野氏は
香港在住日本人女性の中でも草分け的存在だった。
なんたって1960年に香港人男性と結婚するために来港して以来香港在住ときちゃ
昨日今日香港にやってきたヒトたちとは貫禄が違う。
当時独身だった私は「いずれ私も桜会に入会する日が来たりして・・・」などと
なんの根拠もない妄想を抱いていたりしたワケだが
もちろん帰国するその日までその妄想が現実になることはなく。
「私の医食同源50年」というサブタイトルのついたこの本は
その名の通り彼女が香港で慣れ親しんだ食材と料理、その効用を綴ると同時に
その食にまつわる彼女の思い出も語られている。
私が初めて香港に足を踏み入れた頃より遡ること20余年。
その当時の香港の生活や習慣などが実に興味深い。
特に印象的なのが2人の姑のエピソードたち。
(なんと香港で一夫多妻を禁じたのは1970年代に入ってからだったという!)
相当手ごわい姑たちだったようだが、彼女たちを語る牧野氏の言葉の行間からは
感謝と敬意の気持ちがあふれている。
2010年に金婚式を迎えた牧野氏は夫君と現在カリフォルニアにお住まいのご様子。
香港から米国へと生活拠点を移しても精力的にご活躍されているに違いない。