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「九月に降る風」「星空」の林書宇(トム・リン)監督作品。 監督の体験がベースになった物語だという。 監督自身が自らの胸のうちの思いを整理するために製作した作品という印象。 そのためか過去の2作品に比べるとドラマチックな展開はほとんどなく ただひたすら淡々と2人の主人公の姿を時の流れとともに描くのみの物語。 映画としての娯楽性を重要視すると物足りなさは否めない。 しかし複数の車が巻き込まれた自動車事故で同乗していたパートナーを失った 男女が少しづつ、本当に少しづつ自分の足で再び歩き出し始める姿を 丁寧に映し出していくストーリーには監督の誠実さを感じた。 事故に巻き込まれ婚約者を失ったシンミン(林嘉欣:カリーナ・ラム)と 妊娠中の妻を失ったユーウェイ(石錦航:シー・チンハン)。 生きていくための「何か」を無意識に探るようにユーウェイは高雄で ピアノ教師だった妻の教え子たちを訪ね歩き、シンミンは新婚旅行で 訪れるはずだった沖縄へ1人で旅立つ。 手作りの旅の味めぐりのノートに従いさまざまなお店を訪れ 味の評価の星をつけていく。 あの事故がなければ「美味しいね」「これうちの店でも取り入れたいね」 と2人笑顔でノートに星を書き込んでいくはずだったのに・・・。 気丈に黙々と予定をこなしていくシンミンがノートの最後のページを開いた時 彼女同様私も泣き崩れそうになった。 「ミッション終了。大成功!」と書かれたそのページは夫婦となった 彼と2人で「あの時は楽しかったね」と何十年経っても微笑み合える 想い出となるはずのものだった。 そしてミッションが完了してしまった今、シンミンはまた現実へと 引き戻されてしまうのだ。恋人を失い色を失った世界へと。 電話をかけたところでその男もまたその事故で命を落としているのだ。 それでも怒りと悲しみを抑えきれず電話をする。 しかし電話口に出た彼の母親は無言のユーウェイからの電話を 亡くなった息子からの電話だと信じこみ話しかける。 大事な人を失った悲しみは誰であれ同じ。 それを大きく心に刻まれるエピソードだった。 全く縁のないシンミンとユーウェイが合同葬儀で互いの存在を知る。 徐々にこの2人は惹かれあって・・・ などという私の下世話な予想を見事なまでにトム・リン監督は裏切ってくれた。 物語の最後でようやく言葉を交わした2人がこれから先長い時間をかけて ひょっとしたら近づいて行くという可能性もないとは言い切れないが 少なくともこの作品の中ではその展開を感じない。 やはり監督はひたすらに傷ついた人間の再生へと繋がる兆しの物語を 描きたかったのだろう。 その潔さを支持したい。 2010年に結婚→出産としばらくご無沙汰だったが本作が復帰作となった。 久しぶりにスクリーンで見る彼女は少しふっくらとして私生活の充実ぶりを 垣間見たような・・・。 それでも以前からの透明感ある美しさは健在でファンとしては嬉しい限り。 今後もスクリーンでの活躍を期待したい。 百日告別 オフィシャルサイト 台湾映画
by sabunori
| 2017-04-18 14:05
| MOVIE
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