鑑賞し終えてふと思った。
「あれ?主人公の名前はELLE(エル)じゃなかった・・・。」
タイトルの「ELLE」とは名前ではなくフランス語で「彼女」を
意味するのね。知らなかった・・・。
好きとは言い難い。
実際拒否反応を起こすという意見も多そうな作品だ。
私はといえば決して好きとは言い難いものの、ミシェル
(イザベル・ユペール)という人物に興味をひかれた。
家に侵入した男に襲われた後にとる淡々とした行動の数々。
割れて部屋に散らばったガラスを掃除しバスタブに浸かる。
その後家を訪れた息子と何事もなかったかのように食事をする。
あまりにも動揺を見せない彼女の姿に違和感を覚えたが
だからといって彼女が全くダメージを受けていないわけではないと
徐々に理解できていく。
現在の彼女のベースに大きく影響しているのは父親の存在だ。
彼女が子供時代に父親がおこした大量殺人事件。
事件から数十年経った今でも街中で「人殺し」とののしられるなど
理不尽な体験をするミシェル。
耐え難い扱いを受けるたびに心を「無」にしてその場を受け流し
自らの身を守る術を自然と身に着けていったのだろう。
登場人物の言動を見ていると「いかにもフランス人らしい」という印象。
あくまでも私の勝手なイメージだが日本人では成り立ちそうもない作品だ。
足を怪我して杖を使っていても足元は絶対ヒール。
母親同様生涯現役なのだろうと、思わず自分の足元に目を落とす。
(めっきりヒールから遠ざかっている私・・・)
ミシェルを演じたのがクールビューティ・イザエル・ユペールで正解。
彼女がすでに60代だったとは知らなかった。
身体の崩れという単語は彼女の辞書にはない。
恐るべき美。
親の罪が子供の人生にまで飛び火する辛さを知っている彼女が
自分の息子を自分の人生に巻き込んでしまう。
それは母親を助けるためという正当な行動であり、
罪に問われるものではなかったにせよ、なんとも皮肉な展開である。
ELLE(エル)オフィシャルサイト