久しぶりに自転車に乗り、駐輪場でカギを抜こうとしたら抜けない。
ダンナにその話をしたら「ロックはかかるけどカギが抜けないのか?」
と聞かれた。
そこで初めて気が付いた。
「ロックかけずに必死にカギを抜こうとしていた」と。
一体どういうことだろう。
自分で自分が怖くなった。
「散歩する侵略者」を観て思った。
そうか、私は宇宙人に遭遇して「自転車のロックをかける」という
概念を奪われてしまったのだ。
そうとしか思えない。
地球にやってきた侵略者たちはあらゆる概念を人間から奪い取る。
「ま、いいか。やることやったし」とケロリとこの世とおさらばする
彼らの死にざまは新鮮だった。
考えてみれば彼らには「生への執着」やら「死への恐怖」やらという
概念がないのだから至極当然ではあるのだが。
「なるほど。それもらうよ。」
「家族」「仕事」「所有」「自分」・・・人々からその人の大切にしている
概念を奪って自分に取り込んでいく侵略者たち。
私だったらどの概念を奪い去られたら一番辛いだろう。
いっそのこと「自分」を奪われれば辛いとすら感じなくなるだろうか。
松田龍平は演じる前から十分宇宙人感があるのでハマリ役だろう。
「真ちゃんです」と真顔で自己紹介してしまう姿に思わずプッ。
明らかに別人となった夫に戸惑いながらもその変わってしまった夫を
必死に守り、添い遂げようとする妻を演じる長澤まさみもよかった。
夫婦の会話のテンションの温度差が絶妙。
静かに静かに侵略は進んで行く。
タイトル通りどこかシュールで不思議な味わいの地球の危機の物語。
私は結構好きかも。
散歩する侵略者 オフィシャルサイト