「私の親は泳いで大陸から香港へ渡って来た」
そう話していた同僚がいた。
彼らの親世代では香港人であっても出身は大陸という人が多いだろう。
しかし現代の若者は香港生まれの香港育ち。
生粋の香港人の彼らが大陸の浸食に恐怖を感じ、
なぜ自分たちの手で物事を決めていくことが出来ないのだろうと
疑問を抱くのは至極当然のことだ。
本作で登場するさまざまな若者たち。
学生、社会人、男性、女性とそれぞれの立ち位置は違うものの
共通するのは「自分の思いで動き自分の言葉で語る」ということ。
例え稚拙であっても彼らの口から発せられる言葉は胸を打つ。
「上の世代の大人は動かない。
かといって自分たちより下の世代にこの重荷を背負わせるわけにはいかない。
だから自分たちが行動する」
仕事をしながらデモに参加する男性の言葉が心に残る。
素晴らしいなと思ったのは彼らが常に感情に走らないこと。
近隣住民に罵声を浴びせられても
「迷惑をかけているのは事実だから」と受け流し
「目の前の警官を憎んではいけない。自分たちの敵は彼らではない」
と冷静な目を持ち続ける。
中でもレイチェルという香港大学の学生の聡明さが印象的だった。
デモの仲間の1人が「学校を中退したことを少し後悔している」と語ると
「私が勉強を教えてあげる」とサラリと言い放ち、
話し相手の言葉に「そういう考え方、好き」と素直に相手に拍手を送る。
近い将来どんな形でかはわからないがレイチェルの姿をもう1度
目にする日が来る・・・そんな気がする。
あの香港の雨傘運動から4年。
速いものだ・・・などと過去の出来事にしてはいけない。
香港の若者たちは今現在も不安な未来と戦い続けているのだから。
乱世備忘 僕らの雨傘運動 オフィシャルサイト香港映画