作品以前のハナシでまずはイランという国のシステムや
常識といったものに驚いた。
軽犯罪者に限るのかもしれないが受刑者に「休暇」があり
その期間は刑務所から出て家に戻れること。
更にそれを貯めて長い休暇にもできること。
拾った金貨を持ち主に返そうと主人公ラヒム(アミール・ジャディディ)
自身が貼り紙をして落とし主とコンタクトを取り返却してしまうこと。
(イランでは警察は信用できない、ということなのか?)
借金で投獄されたラヒムが拾った金貨を持ち主に返したことで
世間からは正直者の受刑者として祭り上げられる。
それにより借金を踏み倒されてラヒムを訴えた元妻の父親が
世間から非難される空気が漂い始める。
彼が訴える「一般の人々は拾った金貨を持ち主に返す。それは普通の行動で
誰からも褒められることでもない。なぜラヒムだけが賞賛されて
借金を返してもらえない自分が悪者になるのだ」という言葉が印象に残る。
誰1人として極悪非道な人物は登場しない。
(金貨の持ち主を装って持ち去った女性も結局事実は分からず仕舞い)
だが基本的には善人でも皆どこかで「それをやっちゃうの?」という
行動を起こしてしまう。
それは誰かを助けるためだったり善人であるが故の過ちなのだろうけれど。
中でもラヒムの吃音持ちの息子を利用してしまうエピソードは
息子が父親を大好きなだけに心が痛んだ。
イラン映画